社外取締役座談会

社外取締役座談会

当社のコーポレート・ガバナンスについて

―社外取締役として、当社のコーポレート・ガバナンスや取締役会についてどのように感じていらっしゃいますか。

藤岡 : 私と宮間さんは自動車業界出身ではありませんが、そのような私たちでも話しやすいような、オープンな空気があります。社内のメンバーも、専門的なことだけではなく、考え方や背景などを意識して話してくれる。一昔前の日本企業の典型的な取締役会と違って、中に閉じこもっていないし、議論が尽くされるようにもなっていて、その意味ではコーポレート・ガバナンスがしっかり効いていると言えるでしょう。&インクルージョン(D&I)推進に注力されていることも踏まえて就任いただきました。

宮間 : 私は2022年度に就任しましたが、当初から、社外の私に対して議論の前提となる正しい情報を提供しようという会社の姿勢を感じました。取締役会の事前説明会では、社外取締役3人の一人ひとりに時間を割いてくれますし、そこで何か質問したら、取締役会当日にはそれを反映して資料がブラッシュアップされているなど、真摯に対応してもらえています。議論の場でも、かなり自由に発言ができ、社外取締役として期待される役割を果たすための、とてもよいサイクルが回っていると感じています。

丹羽 : 私はこの6月に社外取締役に就任したばかりですが、お二人がおっしゃった通り、風通しのよさは非常に感じられます。発言の順番なども考えなくていい。社内・社外を含めて取締役の出自が多様で、それが活かされる素地があるというのが第一印象です。生産部門会議という、工場を毎月訪問して現場の生の姿を見る機会をはじめとして、社外の私たちが事業を理解できるような工夫もいろいろとしてもらっています。

宮間 : 取締役会に上がってくる前に経営会議で行われた議論の議事録も見られるなど、非常に情報共有が進んでいますね。

藤岡 : 私が就任した5~6年前と比べ、資料の作り方を含めて情報共有はかなり進んできました。取締役会での議論の内容も、個別のテーマより、ある事業の中期的な戦略や、包括的な投資の考え方にフォーカスを当てるようになってきています。

宮間 : 例えば、新工場建設という投資の議題の中で、金額の話だけでなく、そこで働く皆さんの働きやすさといったことまで丁寧に議論される。投資の金額や回収見込みだけでなく、中身の質が話題になっているのはとてもよいことだと思います。

丹羽 : 今後について言えば、売り上げの半分を占める海外に対しても意識を強めて議論していけるとよいですね。例えば、海外のグループ会社の統治がどれだけ進んでいるかといった話題が議題に上がってもよいのではないかと思います。

中期経営計画の評価

―中期経営計画の進捗などについてのお考えをお聞かせください。

藤岡 : 従来さまざまな事業計画などがあったものをとりまとめて、2022年度から現在の中期経営計画がスタートしました。これは大きな前進です。チャレンジするのはいいことですし、全体としてはうまく行っていると思います。 ただ、計画を進めていくうちに、さまざまな状況の変化によって計画通りの売上が出なかったりもします。それを受けて、目標の数字に届かなかったら手を打たなければならないし、超えていたら計画を上方修正するといったように、フィードバックしながら計画を見直していかなければなりません。実績を計画に反映させて修正し、また次の半期の実績を見るというロールアップが現状ではまだ十全に機能していないように思います。 もう1点、新規事業をどう伸ばしていくか。現状では全てに総力を挙げて頑張っていますが、何かの事情で既存ビジネスが急に減産になったとしたらどうするか、というリスクを想定して、新規ビジネスの中でも最大限に伸ばしていくものと、伸びしろを残しておくものの濃淡が必要でしょう。これは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の中で人財をどうやって流動化させていくかということにも関わってきます。

宮間 : 中期経営計画を初めて作ったことは、素晴らしいと考えています。その中で、今後の課題なのはやはり新規事業。これまで受注生産を中心にしてきたところから、新規事業ではお客さまの開拓から始めなければなりません。そうしたビジネスには経験値がないという意味で難しさがあります。どう進めていくのかについて、目標とする数値とその根拠の精度をますます高めていくことが課題だと感じています。

丹羽 : 初めての中期経営計画で掲げた「2030年度6,000億円超」という目標の中で、「新領域/新技術での拡販1,000億円以上」の部分が最もハードルが高く、時間もかかります。いわば未知の世界です。そこに向けて、「もし2030年度に1,000億円以上売り上げようとするなら、2023年度には何をしていなければならないか」というバックキャスト的発想で、全社的にマインドを変えていくことが重要です。2030年度の事業ポートフォリオを想定し、それを落とし込み、営業は、工場は何をすればよいか、という考え方です。この点は、私もこれから注目していきたいと考えています。

藤岡 : これまでのビジネスのやり方を転換するための目標とマイルストーンを設定する第一歩が、この中期経営計画です。進捗に応じてロールアップしながら、新領域に行くための目標を定め、人財戦略を立てる。それを着実に続けていけば、何が必要で何が足りないかが、だんだん分かってくるはずです。

丹羽 : 個々の従業員が会社の方向性の全体像を理解した上で、自分の責任と役割を認識し、貢献できることをしていく。今回の中期経営計画は、そのためのよい入口にもなりました。数値目標だけにとらわれると、不正などコンプライアンスの問題も起きやすくなります。その点、きちんとした目標とそれに向けてのアクションプランを一人ひとりが持つことは、組織ガバナンスの面でも重要なことです。

宮間 : 東海理化の従業員として目標に向けて自分が何をしていくべきかが、しっかりと腹落ちしていることが大切ですし、そのような雰囲気が社内に少しずつ作られてきているようにも感じています。皆さん、高いポテンシャルをお持ちなので、それを最大限に発揮していただきたいですね。

これからの東海理化に期待すること

―今後に向けて期待することや、皆さんの意気込みをお聞かせください。

宮間 : 社外取締役として私に期待されていることの一つは、ダイバーシティ&インクルージョンの推進だと思っています。その点でいうと、初めて生産部門会議で製造現場を訪れたとき、現場には女性がかなりの割合でいるのに、報告される方は全員男性でした。そこで、「問題・課題が発生しているのは現場であり、そこには女性も多くいるのだから、現場のいろいろな人と話をしたい」と伝えたら、あるときから、報告される方の中に女性も入るようになったのです。もちろん、男性・女性ということではなく、能力のある人が活躍できるのが本来の目的ですが、私の発言により変化が起きた、私への期待に一つ応えることができたのかな、と思いました。最終的には、女性の取締役が生まれることが、私にとって大きなテーマです。

丹羽 : ダイバーシティに関連して言えば、現状、海外拠点には現地プロパーの社長がほとんどいません。私自身、海外でアメリカ人社長のもとで働いたことがありますが、やはりその国その地域でオペレーションさせていただいているからには、そこで働く人たちの上に立つのはアメリカ人がよいと感じていました。同じ土地で暮らしてきた者同士だからこそ通じるものがやはりあります。何か問題が起きたときでも、いいことがあって喜ぶときでも、現地プロパーの社長の方がいい。女性取締役と同様に、そうしたローカルの社長が出てくる道筋を作っていくことも、売上の半分を海外が占めるグローバル企業としての東海理化がめざす方向ではないでしょうか。

藤岡 : ここ数年で、東海理化の社内風土には大変革が起きています。言われたことに誠実に応える受注型のビジネスから、自ら戦略・戦術を作ってどう振る舞うべきかを積極的に考えようという風土へと、確実に変わってきています。そうした中で私にお手伝いできることは、大きく言えば、経営と執行の分離を明確にすることだと思っています。一定のコントロールのもとで執行側が自分からどんどん進んでいけるような体制です。取締役会は、経営計画の進捗を常に見ていて、次にどんな手を打つべきかを議論の場で提案する。当社には、必要な能力・素材は全てそろっていますから、大切なのは大きな方向性を間違えないことです。そうすれば、売上6,000億円といったことだけでなく、そもそもの社風が全く変わることでしょう。そうなってほしいし、なりそうだとも感じています。そのために微力ながらお手伝いができたらうれしいですね。

ページの先頭へ戻る