社外取締役対談

「挑戦」を確かな成長へ

強みを磨き、変化を捉え、新たな事業を育てながら、
中期経営計画「TRV2030」の実現と企業価値向上を支えます

2026年6月に新たに宮部取締役を迎えた社外取締役3名が対談し、当社のコーポレート・ガバナンスの在り方や「TRV2030」の実現に向けた経営基盤、新規事業やBtoC領域への挑戦、全員参加の組織風土づくりなどについて、率直な意見を交わしました。

対談メンバー

社外取締役
安部 和志

社外取締役
宮間 三奈子

社外取締役
宮部 義幸

1. 当社のコーポレート・ガバナンスについて

取締役会の変化について、率直な印象をお聞かせください

宮間:昨年も「議題の種類が変わってきた」という話をしましたが、この1年はより、「将来の東海理化のために一緒に何ができるか」、「それを社外取締役という立場でどうサポートできるのか」という関わり方に変わってきました。情報共有も充実しています。結論だけでなく、そこに至った背景やプロセスまで共有いただけるように変化しつつあると感じています。

安部:私も同じ印象です。ガバナンスを機能させるうえで、最も重要なのは情報共有です。その点、東海理化では透明性が高くタイムリーな情報共有がなされており、前提は十分に整っています。今後は、取締役会で議論した内容や社外取締役からの問題提起を、執行側の意思決定にどうつなげていくかです。コーポレートセクレタリーには、執行側から取締役会への情報共有を担う役割に加え、取締役会での議論を執行につなぐ「結節点」としての役割も期待されていると思っています。その点ではさらに進化の余地があると考えています。

宮部:ここ数年、各社の取締役会も、形式的な議論に留まらず中身のある議論ができるようになってきていると感じます。東海理化の社外取締役に就任して間もないですが、執行の詳細な部分まで丁寧に情報共有いただいています。何より印象的なのは、社外取締役を単にガバナンスのために置くのではなく、その知見を積極的に経営に取り込もうとする姿勢です。技術者との懇談の機会を設けるなど、社外取締役から東海理化にとって必要なものを学び取ろうという姿勢を強く感じています。

昨年よりボードメンバー戦略共有ミーティングを設置しました。議論の深まりや監督機能の実効性について、手応えはいかがでしょうか

宮間:月1回ほどのペースで、「TRV2030」の取り組みの進捗や展示会の出展テーマなどについて共有いただいています。実際の展示物を見たり、担当者の想いを直接聞いたりすることで、東海理化への理解が深まり、社外取締役として何ができるのかを考えるきっかけにもなっています。取締役会とは異なる形で、現場をより身近に知ることができる貴重な場だと感じています。

安部:この2年間で、取締役会で扱う議題の粒度が揃い、中長期的・戦略的なテーマにより集中して議論できるようになってきました。一方で、将来の鍵となるようなテーマについては、取締役会だけでは十分に深掘りしきれないこともあります。戦略共有ミーティングでは、そうしたテーマについて担当者と直接、双方向で意見交換することができます。取締役会で議論すべきテーマに集中しつつ、戦略共有ミーティングで個別テーマの理解を深める。両者がうまく補完し合い、良いバランスになっていると感じています。

社外取締役としての独立性や執行側との距離感について、どのようにお考えですか

宮部:就任前から工場見学の案内をいただいたのですが、そうした機会を活かして会社への理解を深め、より的確な発言ができるようつとめたいと思っています。一方で、社外取締役としては、外部から見た「違和感」を指摘することが大きな役割だと考えています。社内の「常識」に対して「本当にそうでしょうか」と問いかける視点は失ってはいけません。会社への理解を深めながらも同質化し過ぎないよう、外部の視点を保つことは重要だと考えています。逆に、執行側の取締役の経験からいうと、執行側が社外取締役に頼り過ぎると経営力は弱まります。執行側がしっかりと判断し、それに対して社外取締役が違和感や問題点を指摘する。そうした関係が理想ではないでしょうか。

安部:おっしゃる通り、社外取締役と執行側は近づき過ぎず、離れ過ぎない適切な距離感が大切だと思います。東海理化は非常にオープンで、社外取締役から積極的に学ぼうとする姿勢があるからこそ、私たち自身も意識しないうちに会社と一体化してしまわないよう、自らを律する必要があります。その意味でも、宮部さんが加わってくださったことは非常に心強く感じています。新たな視点が加わることで、取締役会にも良い刺激がもたらされると思います。

2. 経営基盤の強化

「TRV2030」の実現に向け、今後どのような競争力や経営基盤が重要になると考えますか

宮部:製造業が将来の成長を考えるうえでは、自社の競争力の根源となる技術やモノづくり力をしっかりともち、そこから枝葉を伸ばすように事業を広げていくことが基本だと思います。市場の変化で枝が枯れることはあっても、根幹となるコアはぶらしてはいけません。そのうえで、今後10年を見据えて足りないものがあれば、まずはそれを担う人財を強化し、新たな技術やモノづくり力を育てながら、展開できる市場を探していくことが重要です。同時に、変化のスピードにも目を向ける必要があります。私が経験してきたエレクトロニクス業界では、盤石に見えた事業が3~5年でなくなることもありました。自動車の世界では、馬車から自動車への転換に匹敵するほどの大きな変化は長く起きていませんが、今後もそうとは限りません。また、自動車部品は信頼性を重視し、10年程度の実績がなければ採用しないという考え方があります。ところが、半導体はこの10年で飛躍的に進化しているにもかかわらず、自動車では10年前のプロセスのものが使われています。進化が比較的緩やかな領域と、半導体のように進化の速い領域に、同じ時間軸を当てはめて良いのか。技術ごとの変化のスピードに対応できる力が、これからは重要になると思います。

安部:サプライチェーンをはじめとする経営基盤を、環境変化に対応できるレジリエントなものにしていくことは引き続き重要です。そのうえで大切なのは、成長領域をしっかりと見定めることです。これまでの常識が通用しなくなる中で、自らをどう変化させ続けるか。「TRV2030」は、今の成功体験にとらわれず、新たな技術領域や事業領域に挑戦する方向性を具体化したものだと評価しています。私自身、ソニーで身をもって感じましたが、既存事業が順調であるほど、それが変革の足かせになりがちです。「TRV2030」で描いた方向性をいかに具体化し、成果につなげていくか。これからが正念場です。

宮部:安部さんがおっしゃったサプライチェーンについては、トヨタグループは2次、3次サプライヤーまで把握し、非常に高いレベルで管理されていると感じます。そのうえで申し上げると、技術を生み出すのは結局、人なんです。ところが、それは財務諸表には載らず、コストとしての人件費として捉えられがちです。人的資本経営の重要性が叫ばれる中、人財の価値をどう可視化し、経営判断に活かしていくかが重要です。

人的資本経営の重要性が叫ばれる中、人財の価値をどう可視化し、経営判断に活かしていくかが重要です

宮部 義幸 Yoshiyuki Miyabe

パナソニック ホールディングス株式会社において、研究開発、デジタル・技術分野の経験に加え、グループ会社の経営経験を有する。その豊富な経験と知見、見識を活かして、技術戦略・DX推進を中心に、経営全般に対する監督、助言などをいただくことを期待し、2026年より社外取締役として選任。

3. 資本コストを意識した経営

当社はPBR1倍割れが続いています。企業価値を高め、市場からの評価を向上させるために、何が重要だと考えますか

宮部:パナソニックも私の在任中はずっとPBRが1倍割れで、「どうするのか」と言われていました。重要なのはやはり市場との対話力だと思います。同じ電池事業をやっていながらも、「データセンター向け」という成長市場との接点が注目されたことで、市場からの見え方が大きく変わりました。世の中が成長を期待する領域で、自社がいかに実質的な強みをもっているのか。それを市場にうまく伝えられるかどうかです。

安部:宮部さんがおっしゃった通りで、ソニーでも市場との対話の場を、自分たちを見直す機会にし続けたことが大きいと思います。PBR1倍を超えるには、資本を効率的に活用できているかを常に問いながら資本構成を見直すとともに、将来のエクイティストーリーや中期戦略を明確にし、実行につなげていく。さらに、これまでの成功体験にとらわれず、成長領域へと軸足を移し続けることが必要です。株主や投資家との対話から得た気づきを自らの変革につなげていくことが、企業価値向上には欠かせないと思います。

宮間:DNPでも、市場との対話を重ねることで、会社への理解を深めていただき、将来の可能性に期待していただけるよう取り組んできました。同時に、外部の視点に触れることは、自分たちの事業や強みを改めて見直す貴重な機会にもなります。外部の視点を意識することは、自分たちの事業を改めて見直す機会にもなります。また、社員にとっても、自社が市場からどう見られているのか、自分たちの取り組みが社会からどう評価されているのかを知る機会になる。これは大きなメリットだと思います。

安部:おっしゃる通りです。人的資本をどれだけ経営に活かしているのかは、投資家からも高い関心をもたれています。非財務の領域だからこそ、しっかり説明できれば市場の納得度を高められる。これは課題であると同時にチャンスです。取締役会でも、新規事業や技術、DX・AI、サステナビリティ、人的資本など、企業価値に関わる重要なテーマが議論されるようになってきました。これからは、それぞれを個別に捉えるのではなく、相互の関連性を一つのストーリーとして示していくことが重要だと思います。

株主や投資家との対話から得た気づきを自らの変革につなげていくことが、企業価値向上には欠かせません

安部 和志 Kazushi Ambe

ソニーグループ株式会社において、人事・総務部門の経験に加え、同社海外法人の経営経験を有する。その幅広い豊富な経験と知見、見識を活かして、人事戦略・組織改革を中心に、経営全般に対する監督、助言などをいただくことを期待し、2024年より社外取締役として選任。

4. 成長戦略
―共創パートナーと、BtoC領域への挑戦

新たな事業を育てるうえで、BtoCへの挑戦や外部パートナーとの共創をどのように見ていますか

宮部:将来に向けた取り組みでは、「間違いなく起きる未来」を見極めることが重要です。例えば、半導体が進化したら次に何ができるか、通信網の帯域が広がったら何が可能になるのか。テクノロジーやインフラの変化から、その先に起こることを見通し、先回りして取り組むことが大切です。一方で、「何でもいいから新しい事業をつくってよ」と言っても、BtoCの場合はとにかく難しい。消費者は今あるものには意見を言いますが、ないものには言ってくれないからです。ですから、東海理化はBtoBtoCのアプローチの方が適していると思います。新しい市場を開拓しようとしている企業をパートナーに、一緒に課題を解決していく。そのパートナーを見つけることが重要だと思います。

安部:東海理化には、新しいものに対してオープンで学べるものは積極的に吸収しようという姿勢があり、それは社外取締役に対してだけでなく、顧客やパートナーに対しても同じです。トヨタグループが重要なパートナーであることはもちろんですが、さらに幅広いパートナーとの関係を築くことは、東海理化自身の経営力を高め、結果としてトヨタに提供できる価値を高めることにもつながります。安定した顧客基盤に依存すれば進化は止まってしまう。今の取り組みを継続し、いかに成果につなげていくかが重要だと思います。

宮間:新たな事業を育てるうえでは、パートナーとの共創が非常に重要だと私も思います。ただ、その前提として、自社の強みは何か、どのような価値を提供できるのかをしっかり掘り下げる必要があります。それが明確になってこそ、誰と組むべきか、共創によって何をめざすのかも見えてきます。これまで培ってきた技術に加え、新しいことに挑戦できる環境や多様性も強みになり得ます。変えるべきものと残すべきものを整理し、自社のコアを明確にすることで、誰と組み、どの方向をめざすべきかも、より明確になってくるのではないでしょうか。

宮部:そうですね。パナソニックの車載事業も、始まりはトヨタから「カーラジオをつくってほしい」と依頼されたことでした。トヨタにも自社で設計する力はあったはずですが、ラジオを得意とするパナソニックに任せようと考えたのでしょう。そこで車載に必要な技術やノウハウを蓄積し、さまざまな製品へと領域を広げ、ピーク時には1兆円規模の事業に成長しました。東海理化も新たなパートナーと共創するには、まず「この領域なら東海理化に頼みたい」と思ってもらえるものが必要です。自社の強みを少し広く捉え、これまで取引のなかった企業の中から、成長市場を切り拓こうとしているパートナーを見つけることができれば、確度の高い新規事業が立ち上がっていくと思います。また、BtoC商品が一つでもあると会社の認知度が自然に高まり、採用などにもプラスに働きます。さらに、東海理化のコアコンピタンスを世の中に示す機会にもなる。例えば、世界トップレベルのスイッチをつくる技術を、「腕自慢」する場としてBtoCを活用することもできるのではないでしょうか。

安部:同感です。BtoCというビジネスをもつことで得られる学びは非常に大きい。事業の価値は、売上や利益への貢献だけで判断するものではありません。社員に挑戦を求める以上、経営自身も新しい領域に挑む姿勢を示すことには、大きな戦略的意義があります。BtoCの知見を蓄積するという意味でも、挑戦を続ける価値は大きいと思います。監督機能を果たしながら、適度な距離感でともに成長を実現していきたいと思っています。

宮間:トヨタという大きな得意先をもち、BtoBで成長してきた東海理化にとって、BtoCの新規事業は、従来の事業とは受注規模が桁違いに小さいかもしれません。既存の大きな事業を大切にしつつ、それだけに頼ることへの危機感と、将来の成長の芽を育てていこうという意志から、新規ビジネスに取り組まれています。「0から1」を生み出すには個人の強い想いや熱意が原動力になりますが、「1から10、100、1000」へと成長させるには、会社として市場を捉え、事業を育てる力が必要です。自動車以外の領域では、そうした経験がまだ十分ではないからこそ、BtoC市場で経験を積んでこられたお二人の知見も活かしながら、個人の挑戦を組織として支え、事業をスケールアップさせるしくみもつくっていけたらと思います。そこから将来、東海理化の新たな事業の柱にまで成長するものが生まれたら素晴らしいですね。監督の役割をしっかり果たすことはもちろんですが、皆さんがめざす方向に対して、社外取締役としてどのように貢献できるかを常に考えていきたいと思います。必要なときには「少し違うのではないか」と申し上げることも含め、東海理化の持続的な成長を後押ししていきたいと思っています。

「1から10、100、1000」へと成長させるには、会社として市場を捉え、事業を育てる力が必要です

宮間 三奈子 Minako Miyama

大日本印刷株式会社において、研究・企画開発部門での経験に加え、人財育成やダイバーシティ推進を牽引してきた実績を有する。その豊富な経験と専門的知見を活かし、多角的かつ客観的な視点から、経営変革への監督・助言をいただくことを期待し、2022年より社外取締役として選任。

5. 挑戦文化と全員参加

挑戦文化の浸透や全員参加、ミドルマネジメント層の意識変革について、この1年間の変化をどう見ていますか

宮間:就任して間もない頃、「トラブルやリコールの情報は徹底して共有する一方、成功事例を共有する機会は少ない」という話を社員の方から伺ったことが印象に残っています。安全に関わる情報共有を徹底することはもちろん重要ですが、同時に、挑戦から生まれた良い事例や学びを共有することも、次の挑戦へのハードルを下げることにつながります。

安部:私も同じ印象です。大きな方向性が示され、情報もオープンに共有されることで、社員を巻き込む環境はかなり整ってきました。次の段階は、一人ひとりがどれだけ「自分事化」できるかです。当事者意識をもつには、マネジメントが範を示す、挑戦の場をつくるなど、さまざまな働きかけが必要です。その下地は着実にできています。より多くの社員が自分のこととして捉えることができれば、「TRV2030」の実行力も一段と高まると思います。

宮間:「TRV2030」の策定にはさまざまな層の社員が参加し、自ら課題を抽出して何に取り組むべきかを考えてきました。若手社員が新しいことに挑戦し、いきいきと取り組む姿を見る機会は確実に増えたと感じています。今後は、組織の中核を担うミドルマネジメント層にも広がり、組織全体の意識や行動の変化につながっていくことを期待しています。

宮部:東海理化の規模感や、さまざまな役割を担う人が日常的に接点をもてる環境は、変革を進めるうえで大きな強みです。既存事業では、役割を分担し、それぞれがKPIを追うことで効率を高められます。しかし、新しいことに挑戦するときは、経理だけ、営業だけといった一つの部門だけで実現できるものではなく、組織全体で取り組む必要があります。安部さんがおっしゃったように、一人ひとりが自分事として捉え、役割を超えて動くことができれば、変革は大きく前進します。その点、多様な役割の人が身近にいて、直接コミュニケーションを取れる東海理化の環境は、大きなアドバンテージになると思います。

最後に、当社の未来に向けてメッセージをお願いします

宮部:新規事業への挑戦は、事業をつくるだけでなく、「人をつくる」という意味でも大きな価値があります。小さな事業であれば、若いうちから自らの責任で事業全体を担う経験ができます。それは将来の経営人財を育てるうえでも非常に重要です。新規事業では、営業や技術、モノづくりなど、既存事業にはある機能が足りないこともあります。それを見極め、自ら補ったり、パートナーを見つけたりすることも、事業を率いる人の力量です。もちろん、新規事業は簡単には成功しませんが、たとえ失敗したとしても、その過程で得られる経験や知見は、既存事業だけでは得難いものです。失敗した人に烙印を押すのではなく、その経験をしっかり評価することが大事だと思います。

安部:同感です。どの会社も試行錯誤をしているわけで、新規事業に成功の方程式はありません。もちろん、無茶な挑戦は避けるべきですが、一定の基準を満たしているのであれば、足りないものがあるからと止めるのではなく、それをどう補うかを考える。宮部さんがおっしゃった通り、最後は、挑戦する人の情熱と、経営がどれだけ腹を据えて後押しできるか。その組み合わせが大切だと思います。

宮間:挑戦は決して平坦な道ではありませんが、「登った人にしか見えない景色」があると思います。新しい事業を立ち上げる経験を通じて、若いうちから事業全体を見渡し、経営的な視点を身に付けることができます。そうした経験をもつ人が増えることは、研修だけでは得られない実践的な次世代経営人財の育成にもつながります。東海理化の未来のためにも、ぜひ多くの方にチャレンジしていただきたいと思います。