車は移動手段から居住空間へ。
未来のクルマを彩る
透過加飾パネル。
東海理化が長年経験を積んできた、車室内のスイッチ類。この領域で、今大きな変化が起ころうとしています。キーになるのが東海理化が開発した「透過加飾パネル」です。ふだんは車室内のインテリアとして馴染んでいる樹脂や金属、革などのパネルの裏側から光を透過して文字やマークを浮かび上がらせ、スイッチとして機能させる技術です。自動運転技術が普及すれば、クルマは移動手段から「快適に過ごす場所」という意味合いが強くなっていきます。そんな未来の車室内をより快適に演出する透過加飾パネルの開発・提案プロジェクトについてご紹介します。
# PROFILE
開発 名雪太朗
HMI製品開発部
# PROFILE
営業 吉野克彦
第1営業部
# PROFILE
開発 坂井祐紀
HMI技術部(現在は海外出向中)
01
必要なときだけ光らせてスイッチを見せる
透過加飾パネルの営業活動がスタート。
吉野
実は透過加飾パネルは、10年くらい前にはカーメーカーへの提案をスタートしていました。クルマの中はどうしてもスイッチ類でガチャガチャしがちですが、それを「平坦にスッキリ見せられますよ」とご提案していたんです。ところが見た目の良さよりも使いやすさを損ねないことが優先され、当時は採用には至りませんでした。
名雪
ここ10年で、ユーザーがiPhoneやタッチパッドに完全に馴れて、静電スイッチ(機械式ではなく指先の静電気を検知する方式のスイッチ)が当たり前になりましたよね。だからこそ、静電スイッチを車室内のインテリアの裏側に埋め込んでしまう透過加飾パネルがより注目されてきたんだと思います。
坂井
そうそう。必要なときだけ光らせてスイッチを見せる。それ以外のときは、スッキリした内装パネルにしか見えない。透過加飾パネルは、ソフトウェアが進化したこれからのクルマに相応しい内装演出ですね。
吉野
2021年ごろに、展示会でカーメーカーに興味を持ってもらって、次期モデルに採用してもらうための営業活動をスタートさせました。しかし、当然ライバルメーカーの存在もあり、開発・提案活動は一筋縄ではいきませんでした。
02
パネルメーカーには負けられない。
スイッチ屋としての意地を見せた。
名雪
パネルに微細な穴を空け、そこから背面にある照明の光を通すのですが、試行錯誤の連続でした。試作品をつくり、カーメーカーに見せにいったりしながら、様々なバリエーションを試しました。光がキレイに透過せずに、スイッチとして浮き上がらせたいシンボルマークや文字などがシャープに映らず、なかなか苦労しました。この段階では、かなり量産技術を担当している坂井さんの所に相談しましたよね。
坂井
そうですね。先頭バッターになるのは、製品開発の名雪くんで、私はそこから実際に量産する際の課題を潰していくミッションがありました。ものづくりの課題としては、通常のスイッチよりもパネルが大型なことに苦労しました。樹脂をつくる金型をつくるのも、成形するのも時間がかかる。わずかなミスがあるだけで、大きなパネル全体が不良になってしまいますからね。
吉野
営業的には、スイッチメーカーである東海理化と競合相手となる内装パネルメーカーを、カーメーカーに比較されている感じはありましたね。ただ、そこは高度な技術が詰まったスイッチ類で長年技術を培ってきた、名雪さんや坂井さんの意地を感じましたね。おかげで、カーメーカーからも東海理化の提案を高く評価していただきました。
坂井
そう言ってもらえると頑張った甲斐がありますね。現在少しずつ、カーメーカーの車種に東海理化の透過加飾パネルが採用されてきていますが、今後も様々な車種で採用されていくと嬉しいですね。
03
竹でできた加飾パネルなど
SDGsを意識した製品を開発したい。
坂井
カーボンニュートラルや、SDGsといった環境配慮の潮流は間違い無く高まってきています。その中で、今後求められるのは本物志向。現在は「木目風の樹脂パネル」が多いですが、本物の木や竹を内装パネルに使用するニーズも出てきていますね。
吉野
私は営業としての自分たちの役割を広げていく必要があると感じています。これまでは機能部品としてのスイッチに詳しければ良かったですが、透過加飾パネルやHMIの領域ではスイッチ周辺のパネルや表皮などにも詳しくなる必要があります。いち部品メーカーというよりは、HMI領域におけるトータルコーディネーターとして、信頼される営業になっていきたいです。
名雪
メカっぽいクルマから、大きなディスプレイ搭載されていてAIが自律的に判断してクルマを動かすような時代が近づいてきています。今回開発した、透過加飾パネルもそうですし、例えば東海理化で開発しているゲーミングデバイスをクルマに組み込んだっていいと思うんです。従来のクルマの固定概念にとらわれずに、住宅のインテリアなどの勉強もしながら、新しい製品を開発していきたいですね。