技術開発戦略・知財戦略:技術開発センター

オンリーワン技術で社会課題を解決し、
次の事業の柱を創る

技術開発センター長
長尾 貴史

技術開発戦略(オープンイノベーションの加速)

当社は社会課題解決を通じた企業価値の向上をめざし、技術開発センターを核に、ディープテック※を中心とする基盤技術から新たな事業ポートフォリオを切り拓く使命を担っています。車載事業に留まらず、エネルギー、半導体、ヘルスケア、インフラ、農業などの新領域においても、オンリーワン技術の創出と育成を通じて、新たな事業の柱を構築していきます。その際、確実な勝利が見込める成長分野を厳格に見極め、経営資源を全社レベルで重点投入することで、強固な収益基盤と持続的な企業価値向上を実現していきます。
成長分野で勝ち続けるためには、自前主義にとらわれることなく、大学や研究機関が生み出す先端技術に、当社の社会実装力や顧客基盤に加え、事業開発や市場開拓に強みをもつパートナーの強みを組み合わせることで、オンリーワン技術の創出と育成を加速し、技術の早期事業化を推進していきます。また、志を同じくする他の大企業とも連携し、それぞれの強みを融合することで事業規模を拡大し、産業化を実現します。これらの取り組みが、当社のディープテック領域におけるオープンイノベーションです。

※科学的な発見や革新的な技術に基づき、社会の重要な課題を解決しうる技術。

持続可能な成長スキーム構築(サステナブル・イノベーション・エコシステムと人財育成)

研究と実証を同時に実現

大学発スタートアップとの連携で、「サステナブル・イノベーション・エコシステム」を構築します。優れた技術の社会実装に伴走し、事業化収益の一部を大学へ還元することで、新たな研究を生み出す好循環を創出します。また、人財交流による専門性向上と、大学やスタートアップが創出した先端技術の事業化を当社が担うことで、事業創出を推進します。さらにその利益を研究開発へ再投資することで、イノベーション創出の循環を加速し、エコシステムの持続的成長を実現します。
成長領域への挑戦には、それを事業化できる人財が不可欠です。出向人財の博士号取得を推進し、2030年度までに開発部門の20%以上を博士人財とする目標を掲げ、独自のキャリアパスでイノベーションを完結させる「事業家」を育成。勝機には社内外の人財を迅速に結集し、経営資源の集中投入により事業化を加速させ、圧倒的な実行力で他社の追従を許さない競争力を確立します。

技術開発の循環

種まきから事業創出へ

2024年、2025年は大学やスタートアップとの信頼関係を築きながら、未来の事業創出に向けた種まきを進めた期間でした。ディープテック領域では、研究成果や技術そのもの以上に、志をともにする人財や組織との関係構築が重要です。当社は出資や人財派遣を通じて伴走しながら、事業化の基盤づくりを進めてきました。2026年はその成果を事業として形にする転換期であり、2027年以降は具体的な事業成果の創出につなげていきます。

次の事業の柱となる重点成長領域

1. エネルギー分野 ~次世代の脱炭素社会を支える高性能エネルギーの開発~

次世代電池

実績:技術者3名派遣(うち2名博士課程)

NU-Rei(株)と低温プラズマ技術を活用した電池を共同開発。低温プラズマで生成したナノグラフェン負極により、従来比2倍以上の大容量化と高い安全性を両立。2027年度中の開発完了をめざし、当社製蓄電池への搭載を通じて蓄電池事業の競争優位性を確立します。

2. AI・データセンター分野 ~電力や発熱、高速通信の課題に対し、複数テーマを包括的に推進~

熱対策

実績:「新あいち創造研究補助金」に採択

(株)U-MAP/関西大学との高熱伝導率放熱シート共同開発。高い熱伝導性によりサーバー冷却設備の負荷を下げ、データセンターの劇的な省電力化と機器の小型化・高密度実装に直接貢献し、2026年度中の製品創出を目標にしています。

情報通信

Tride(株)のマイクロLEDと東海理化の駆動ICを結合した光電融合技術を共同開発。伝送を電気から光へ変換して発熱・遅延を極限まで抑制。データセンターの劇的な低消費電力化と、超高速・大容量通信の実現に大きく貢献します。

3. 次世代半導体分野 ~高性能化・省電力化を支える次世代材料と製造インフラの事業創出~

次世代材料

実績:技術者3名派遣(うち1名博士課程)

NU-Rei(株)と酸化ガリウムエピ成長技術を共同開発。SiCを凌駕する超高耐圧・低損失特性により、次世代パワー半導体の省エネ化・低コスト化に貢献。2026年度中のサンプル販売を通じて市場性を見極め、事業化を推進することで競争優位性を確立します。

製造インフラ

(株)UHPとの超高純度水素精製装置共同開発。先端半導体の超微細化プロセスに不可欠な超高純度ガスの安定供給インフラとして先端プロセス市場へ参入をめざす。試作品が完成し、具体的な事業化活動を強力に推進します。

4. 次世代モビリティ分野 ~車室内空間の価値変革を捉え、既存事業を高度化~

車室内無線給電

実績:「NEDO補助事業」に採択

(株)パワーウェーブとの車室内HMIデバイス共同開発。公的資金による後押しを受けながら2026年度中の革新的製品創出を目標。将来的な配線制約をゼロにすることで最適なレイアウトと車両軽量化を実現し、EVの航続距離向上に直結する付加価値を提供します。

Vision実現に向けて
社会課題の解決に貢献する東海理化の製品

大学発ディープテックの社会実装に挑む

Voice

次世代電池の事業化へ! 名古屋大学発スタートアップでの挑戦

名古屋大学発スタートアップのNU-Rei(株)に出向し、低温プラズマ技術を活用した次世代電池の開発に挑戦しています。さらに、このたび博士後期課程に進学し、社会人ドクターとして研究を推進しながら、高度な専門性の習得と事業化の加速に取り組んでいます。この革新技術の社会実装を通じて当社の新事業拡大に貢献するという強い使命感をもち、日々試行錯誤を重ねています。

新商品開発部
(NU-Rei株式会社出向)

川上 将太郎(左)
尾関 大輔(右)

「守り」から「攻め」へ、そして事業を動かす武器へ

攻めの知財戦略を加速

当社は2025年統合レポートで、「守りの戦略」から「攻めの戦略」への転換を掲げました。知財を製品保護に留めず、創出した技術を競争優位に導き、新規事業やライセンス活用へ展開することで企業価値を高める考え方です。2026年度は、この戦略を実行段階へ移しています。知財を重要な経営資産として位置付け、既存製品の競争力強化や次世代製品の創出、新規事業創出や収益機会の拡大につなげて、持続的な成長の実現をめざしています。

攻めの知財戦略を実行段階へ

攻めの知財戦略を実践するための中核が「三位一体活動」です。知財部門では戦略担当者を配置し、各部門が開発初期から連携して市場動向、競争環境、知財リスクを分析し、「どの市場で勝つか(事業性)」「どの技術を開発するか(技術優位性)」「何を権利化するか(知財優位性)」を検討しています。複数の開発テーマについてこの3つの指標を評価するとともに、事業性検討、技術開発、知財化を一体で推進し、それぞれの活動を反映し合うことで、事業化・知財化を見据えた技術開発や、技術と知財による競争優位を活かした事業化につなげ、事業の勝ち筋を構築するための活動を進めています。そのうえで、必要な知財ポートフォリオを戦略的に構築し、事業を支える攻めの参入障壁の形成に取り組んでいます。

事業の勝ち筋を描き、経営判断につなげる知財活動

当社の知財活動は、TRV2030の実現に向けて、事業化の成功確率向上、競争優位につながる知財ポートフォリオの構築、そして迅速かつ最適な経営判断につなげることをめざします。
勝ち筋の検証を通じて得られた評価結果は、テーマの継続・重点化・見直しなどの経営判断に活用します。また、将来の成長領域や投資領域を明確化し、経営資源を有望分野へ集中させることで、事業ポートフォリオの強化につなげていきます。
さらに、大学やスタートアップとの共創や規格化活動も組み合わせながら、事業・開発・知財を一体で推進し、事業の将来像を描き、将来の成長領域を見極め、企業価値向上に取り組んでいきます。

企業価値向上のシナリオ
知財戦略活動を事業戦略、開発戦略、知財戦略の三位一体で推進し、事業の勝ち筋を構築し、競争優位を確立

2026年度の取り組み

1. 実績

項目 取り組み概要 実行状況
知財が事業性検討へ参画 知財は、知財情報の活用だけでなく、開発初期から事業性・技術優位性・知財優位性を評価し、各部門と一体で活動することで、事業の勝ち筋や競争優位の源泉を明確化した事業性検討を実施 事業性検討実施テーマ数:4テーマ
知財投資原資の創出および選択と集中 保有特許・出願案件を見直し、その原資を重点領域へ再配分することで、競争優位の構築や攻めの参入障壁形成につながる知財ポートフォリオの強化を推進 保有特許見直し実施件数:550件
ポートフォリオ強化テーマ数:1テーマ
知財権の活用 保有知財の活用に向けて、外部専門機関を活用した保有知財の評価を実施、ライセンス活用や特許譲渡の可能性を調査
保有知財の多くは自社製品防衛型であり、外部利用を前提とした特許ではなかったため成果につながらなかった
今後は三位一体活動を通じて、競争優位を生み出す領域へ知財投資を集中することで、事業成長の原動力となる知財ポートフォリオを構築
評価対象特許件数:180件
規格化に関する出願活動 標準化・規格化の推進と、出願活動の一体運用 規格化検討テーマ:1件
人財育成・組織体制 知財リテラシーの向上ために知財部門と新商品開発部門との連携を強化し、事業・開発・知財を横断的に理解できる人財を育成 育成強化人数:5名
知財ポートフォリオの将来像
2030年に向けて既存製品、次世代製品、新領域・新規事業の出願比率の見直し

2. 発明者報奨・表彰制度

事業競争力に結び付く発明を促すため、発明者報奨・表彰制度を見直します。評価軸を出願・権利化件数から、事業化への貢献度、事業性、技術・知財の優位性へ転換し、「件数を積み上げる知財」ではなく「事業を成長させる知財」を評価します。発明の価値を事業成果との関係で捉え、挑戦的な技術開発と質の高い知財創出を促します。

今後の展開:知財を事業を動かす武器へ

今後は、事業性検討を全社へ展開し、開発初期から3つの戦略を一体で検討する体制を強化します。市場動向、競争環境、知財リスクを早期に捉え、勝ち筋に沿った知財ポートフォリオを構築します。活動の進捗と成果を継続的に検証し、事業環境の変化に応じて戦略を機動的に見直します。
また、「攻めの出願」へのシフトを進め、新規事業や将来のライセンスにつながる基盤を強化します。知財を「守りの資産」から「事業を動かす武器」へ変え、企業価値向上につなげます。