特集2:人的資本経営

理念・ビジョン・事業戦略を踏まえた人的資本経営に取り組み、持続的な成長を実現するため、多様な個を活かし合い、挑戦を通じて新たな価値を創造する環境・人財づくりをめざします。

Message

当社では、1948年の創業以来、「豊かな社会づくりに貢献」「個性とチャレンジ精神を尊重」「自然・地域と共生する企業」を経営理念に掲げ、事業を進めてまいりました。
また、2021年には、当社が長年にわたり培ってきた、そして今後も大切にしていくべき価値観を「東海理化イズム」としてまとめ上げ、将来に向けて考動することの大切さを全社員で共有してまいりました。
こうした経営理念・東海理化イズムを踏まえ、成長戦略を実現するために、全員が活躍できる「東海理化の人的資本経営」に取り組んでまいります。
「全員活躍を実現するチームづくり」を土台に「必要な人財の育成・活用」と「求める人財の挑戦・進化」を合わせた3本の柱を軸にさまざまな施策を実行し、社員の能力、スキルを最大限に引き出すことで、会社の持続的成長の実現をめざしてまいります。

執行役員
コーポレート本部長、ダイバーシティ推進室担当
佐々木 澄和

全員活躍に向けた人事戦略

全員活躍を実現するチームづくり

人事戦略の中でも土台となるのが「全員活躍を実現するチームづくり」です。中でも「健康経営の推進」「心理的安全性の向上」「キャリア自律支援」は全員活躍を実現するうえでも欠かすことのできない取り組みであると位置付け、積極的な取り組みを続けています。

1 健康経営の取り組み

めざす姿

当社においては、「一人ひとりが主体的に健康づくりに取り組み、心身ともに健康でいきいきと働き続けることができる」状態の実現を通じて、社員やそのご家族の心身の健康リスクの低減と、会社における生産性の向上をめざしています。
具体的な取り組みとしては、健康に関する講演会の開催、InBodyチャレンジによる職場単位での体脂肪率の改善、禁煙チャレンジによる喫煙率の改善など、当社の強みである「職場」の力を活かした取り組みを数多く展開しています。

事例 InBodyチャレンジ
社員の筋肉量アップと体脂肪量のダウンを通じて、職場の力を活用した社員の健康増進を図る「TR InBodyチャレンジ」を開催しています。毎年部署単位での参加を募ってエントリーができるようになっており、個人や部署単位での表彰制度も設けています。

推進体制

当社は、社長が「健康経営推進責任者」となり、事務局の人事部安全健康推進室、各工場健康推進センター、各地区安全衛生委員会が連携を取りながら、全社一丸となって健康経営を推進しています。

推進体制図

健康経営優良法人ホワイト500に認定

健康経営のより一層の推進を目的として、健康経営2030ビジョンを設定しました。健康方針を策定し、「社員が自ら健康維持・増進につとめる(自己保健義務)」と「社員が心身ともに健康かつ安全に働けるための配慮をする(安全配慮義務)」の両輪で健康活動を推進し、安全で安心な職場づくりに取り組んでいます。これらの取り組みが評価され、2020年から5年連続で「健康経営優良法人」に選定されています。

健康経営2030ビジョン

2 心理的安全性の向上

2023年~2024年にかけて上司と部下のコミュニケーションの質を向上させ、ハラスメントのない職場づくり、高い成果を出せる職場づくりに向けた上司向けの研修を実施し、約800名が参加しました。また、マネジメントの強化やハラスメントの早期発見のしくみも力を入れており、コンプライアンスアンケートに加えて各職場に相談員制度を設け、社員が気軽に相談できる職場づくりを推進しています。

ハラスメントガイダンス(2022年4月)
役員対象/対象人数:36名
事例共有、事例に関する議論
コミュニケーション研修(2023年~2024年)
役員・部門長対象/対象人数:80名
係長・グループ長対象/対象人数:712名
自社のハラスメントの実態、コミュニケーション手法(傾聴・1on1)
コンプライアンスアンケート(2024年3月)
全社員対象/回答者数:4,791名(回答率 約70%)
事例 相談員制度
ハラスメントの防止と、より心理的安全性の高い職場づくりを推進するため、2022年4月より各職場に「相談員制度」を設け、職場の悩みごとを広く扱う担当者を設置しています。相談員は、秘密を厳守し、相談者の同意がある場合にのみ関係部署との連携をサポートします。この制度により、相談が増え、社員一人ひとりが思ったことを気軽に言える職場の実現につながっています。また、社員一人ひとりがいきいきと働けるようにサポートすることを目的として、社員の家族から社員の会社生活に関する悩み相談を受け付ける「家族相談窓口」を開設し、メールやLINEでの相談を常時受け付けています。

Message

株式会社Pallet
代表取締役
羽山 曉子さま

2019年より、心理的安全性が高く、一人ひとりが自分の想い(WILL)を大切に知恵を出し合い、能力を最大発揮できる職場環境に向け、人財育成やキャリア開発、組織開発の取り組みを東海理化と進めてまいりました。
取り組み当初、社員の皆さまが仕事に向き合う姿勢に、「お客さまのために」という利他の精神を見るとともに、決めたことを質にこだわり探求しやりきる堅実さ、実直な在り方に感動したのを覚えています。一方で、職人気質が強い組織に見られる事象ですが「お客さまのために」がときに強過ぎることで、リーダーが自分自身に厳しく、チームへの関わりが愛とともに厳しくなり、リーダーご自身が苦しくなっているのではないかとも想像していました。
そうした仮説をもとに、リーダー向けコーチング研修やキャリア開発ワークショップ、全ライン長向けコミュニケーション研修など、心理的安全性を高め、成果を出す組織に向かうための研修を実施させていただきました。特に2024年に実施した700名を超える全ライン長向けコミュニケーション研修は、創業ストーリーにある「スイッチ」をヒントに、「一人ひとりの心のスイッチを入れるコミュニケーションとは何か」を探求。どのような言葉や態度が心のスイッチをオンにし、逆にオフにしてしまうのかを考え、リーダーの行動変容をつくる内容でした。研修後は、うれしいことに現場で心理的安全性やエンゲージメント向上を意識した質の高いコミュニケーションが着実に増え、組織の雰囲気にも変化が生まれ始めているとお伺いしています。
組織風土の変革には時間を要しますが、一人ひとりのコミュニケーションの質の向上がより良い風土をつくり、個人と企業の成長につながることは間違いありません。東海理化の大切にする「人間性尊重」の精神を礎に、リーダーの皆さまが率先して「心のスイッチ」を押し続け、挑戦を恐れずに新たな価値を生み出していくことを確信し、心から楽しみにしています。

3 キャリア自律支援

株式報酬制度の導入
当社は、2024年8月に株式報酬制度を導入しました。社員が当社株式を保有することで、社員の帰属意識や経営参画意識を醸成し、当社業績や株価上昇への意識を高めることにより、当社の中長期的な企業価値向上をめざします。
キャリア面談の強化
社員自身がこの先どうなりたいのか考えやすくするため、キャリアデザインシートの項目を見直し、キャリア自律支援で重要な役割を担う面談者(職場上司)を対象に説明会を開催しました。
異動希望のある社員の育成計画
3年連続で異動希望のある社員を抽出し、各部署で育成計画を立案。その育成計画に基づき、異動希望者が確実に異動できるようしくみづくりを行いました。

求める人財の挑戦・進化

当社では、東海理化の人財として価値を提供し続けるためのしくみを整備し、提供をしています。具体的には、社内外の多様な機会を自ら手を挙げた人財に対して提供する他、経営・マネジメント・専門などのキャリア志向に合った成長をオンデマンド教育や異業種交流会などの場を通じて後押ししています。

4 挑戦を後押しする取り組み

異業種交流

全社員対象
情報感度講座(異業種セミナー、講演会、ワークショップなど)、育成的出向

事例
当社では、社内の知と経験のダイバーシティを高め、文化の継承と新たな文化が生まれる風土づくりを促進するため、異業種交流の機会をさまざまな形で提供しています。他社と合同のセミナー、ワークショップ、リーダー講演会などを通じて自社にない考え方を獲得するとともに、自社の枠を超える体験をスキルアップや行動変革につなげてもらうための育成的出向の取り組みもスタートしています。

360度フィードバック

部長・室長・課長対象
自己評価・他者評価のギャップに基づく本人へのフィードバック

事例
リーダーシップの強化とマネジメントスキルの向上を目的として、2024年から部長・室長・課長向けの360度フィードバックを導入しました。年に1回、役割資格要件に基づく項目について自己評価と他者評価を行い、フィードバックを行います。これにより、ライン長の気づきを促し、組織としてのエンゲージメントの向上を図ります。

オンデマンド教育

全社員対象
受講希望者に対する6か月の学習プラットフォームIDの提供

事例
社員のキャリア自律に向けた支援として、上司と部下でキャリアについて話し合いを行い、自身のありたい姿やめざす姿の実現のため、必要な知識やスキルを身に着ける機会としてオンデマンド教育の導入を決定しました。教育を受けられる対象者は、全社員とし、実際に手を挙げた人数は600名程度で全社員に占める割合の9.3%となりました。

Voice

異業種交流の取り組みの中で、2023年より、エアコン製造・販売を手掛けるダイキン工業株式会社さまとともに、生産部の女性を対象とした交流会を開催しています。2024年9月現在までに4回開催し、生産現場目線の課題や女性特有の悩みなどを話し合い、多様な価値観に触れ、気づきや学びにつながる取り組みとなっています。ダイキン工業さまから交流会に参加された社員の声もいただいていますので紹介させていただきます。

  • 女性が製造現場で働くのは難しさがあります。若手社員の声をなかなか聞けていなかったので、話を一緒に聞くことができて良かったですし、東海理化・ダイキン工業の社員みんなが、強い信念をもって仕事に取り組んでくれている意志を感じることができました。
    滋賀製造部 奥田さま
  • 交流会では、座談会や工場見学など、普段の仕事の中では体験することができない経験ができました。個人的な見解になりますが、東海理化は女性を活躍させる取り組みが、すごく進んでいる印象をもっています。私たちの職場にも持ち帰りたいと思いました。
    滋賀製造部 松坂さま
  • 座談会では、フランクに話すことができ、横のつながりができたことが良かったと思います。どこの会社も生産現場で働く女性特有の悩みを同じように抱えていて、それを共有できたことがうれしかったです。
    堺製造部 阪口さま
  • 東海理化の社員の方は、女性が管理職になるのはハードルが高いと感じていたそうですが、それでも自分が第一人者になってやっていくぞと強い想いをもってやられている方が多くいました。強い想いをもたれた方がたくさんいることを知り、刺激を受けましたし、一層頑張りたいと思えるきっかけになりました。男性も女性も同じように活躍していける職場であってほしいという想いがあります。管理職の女性が増えれば、それをめざしたいと思える人も増えてくると思いますので切り開いていきたいです。
    滋賀製造部 濵田さま

必要な人財の育成・活用

当社では、事業構造の転換によるソフトウェア人財の不足を補うため、早くから社内公募により希望者を募り、リスキリングプログラムの提供を通じた人財育成を行ってきました。2025年には東海理化学園におけるソフトウェア人財の育成を開始するなど、事業拡大に向けた人財の確保をさらに強化していきます。

5 人財の確保・育成に向けた取り組み

事例 リスキリングプログラムによるソフトウェア人財の育成
事業ニーズに基づいて、幹部職以外を対象とした公募(現職種・経験不問)を実施し、ソフトウェアスキルの獲得意向がある社員約100名以上が応募しました。エレクトロニクスの知識や経験のレベルに応じて、6か月のソフト基礎教育・5か月のソフト専門教育プログラムを経て、約30名がソフト設計部門への異動を行いました。ソフト設計部門内でのスキルアップ者を含めると新たに約60名がソフトウェア人財として活躍しています。
事例 東海理化学園でのコンピューター制御科新設
ソフト人財の育成を目的として、コンピューター制御科を新設し、2025年度からの開校と初年度は10名程度の受け入れをめざして準備を進めています。コンピューター制御科指導者の育成、1760時間にも及ぶ教育カリキュラムの策定、指導体制づくりなどの準備を進め、事業の推進・拡大に必要なスキルの教育と実践を支援しています。

指標および目標

当社では、上記戦略の実現に向けて、次の指標を用いて施策の推進を行っており、当該指標に関する目標および実績は、次の通りです。
※詳細のデータについては、「サステナビリティデータブック2024」をご覧ください。

指標 2023年度 2025年度目標 施策
全員活躍を実現する
チームづくり
今の会社で働くことができて
本当に良かったと思う回答率
68.4% 70%以上 キャリア面談強化/コミュニケーション向上研修
疾病における休務発生率 4.0% 2.0% 二次検査(医療機関受診)100%
心身不調による生産性低下 22.4% 12.4% 健康イベント・講演会の開催
肥満者割合 28.4% 20.0% InBodyイベント/食事改善指導
男女間賃金格差 65% 68%以上 女性社員のキャリア形成支援研修/
男性社員の育児休業取得促進
女性管理職比率 1.9% 2.1%以上 マネジメント向け教育/異業種リーダー講演会
男性育児休業取得率 72.2% 75%以上 マネジメント教育/取得事例の共有
求める人財の
挑戦・進化
社内外の横断的交流を
目的とした施策参加者数
14.6%
(981名)
30.0% 異業種交流施策、風土醸成のための全社施策、
属性別の活動(女性、障がい者、LGBTQ他)
必要な人財の
育成・活用
リスキリングによる
ソフトウェア技術者の育成
60名 100名 社内公募
リスキリングによるソフトウェア技術者の育成
新卒コース別採用による
ソフトウェア技術者の確保
実績なし 16名 ※内10名程度は学園コンピューター制御科の採用