社外取締役ダイアログ

社外取締役
藤岡 圭
社外取締役
宮間 三奈子
社外取締役
安部 和志
社外取締役藤岡 圭
三井倉庫ホールディングス株式会社において、企業経営の分野をはじめとする豊富な知識と物流部門における豊富な経験を有する。その豊富な経験と知見、見識を、主に物流部門を中心とした経営全般について、専門的な観点から業務執行に対する監督、助言などをいただくことを期待し、2017年より社外取締役として選任。
社外取締役宮間 三奈子
大日本印刷株式会社において、研究・企画開発部門での経験に加え、人財育成や多様性確保の旗振り役として、実績を有する。その豊富な経験と知見、見識を活かして、客観的かつ科学的な視点から、経営変革への助言をいただけるものと期待し、2022年より社外取締役として選任。
社外取締役安部 和志
ソニーグループ株式会社において、人事・総務部門の経験に加え、同社海外法人の経営経験を有する。その幅広い豊富な経験と知見、見識を活かして、人事戦略・組織改革を中心に、経営全般に対する監督、助言などをいただくことを期待し、2024年より社外取締役として選任。
変革期の東海理化に新しい風を吹き込み、
経営と監督の役割を果たしながら
バックアップを続けます
外部の視点から東海理化を支える社外取締役3名に、当社のコーポレート・ガバナンスの在り方や新たに策定したパーパス・ビジョン・バリュー、中期経営計画の進捗状況、人的資本経営の推進などについて、率直なご意見をいただきました。
当社のコーポレート・ガバナンスについて
当社のコーポレート・ガバナンスや取締役会についてどのように感じていらっしゃいますか。
藤岡:取締役会の形が社外3人と社内3人の形になっているように、今当社はダイナミックに変わりつつあります。社外取締役となり9年目になりましたが、就任当初から、企業としてめざす目標を示すビジョンをつくろうよ、経営計画をつくろうよとずっと言い続けて、前社長の頃から色々な改善を進めてきたことがようやく形になってきたなという想いです。特に2022年に初めて中期経営計画をつくって以降は、人財の配分を大きく変える方向へと一気にドライブがかかりました。
その一方で、今年度は品質問題が起こるなど軋みが出てきてしまったことは重く受け止めています。ドライブのスピードはそのままに、真摯に対応し再発防止を進めていかなくてはいけないと考えます。
宮間:3年前に就任したときには、二之夕社長のリーダーシップのもと、皆さん頭では変革の必要性を理解できてはいるもののついていけていないような、どこか前のめりの印象がありました。それが今では、会社全体が同じような形で動き出しているなと感じています。ただ、みんながエネルギーをもって同じ方向をめざすと、どうしても抜け落ちてしまうものが出てきます。私たち社外取締役がそこに気づく、疎かにしないという役割も重要になってくると感じています。
安部:かなり進化した東海理化に参画させていただいた立場として最初に感じたのは、とても風通しが良い会社だということです。社外取締役に対してもあらゆる情報を共有いただき、得られる価値はできるだけ取り入れようとする気概は素晴らしいと思います。お二人のお話もお聞きして、成長に向けて挑戦を続ける現在の東海理化の社外取締役に求められるのは、誤った道に行かぬよう正しい方向を示唆させていただくことだと考えています。その観点に絞ると、情報がやや広範にわたっている印象があります。正しく監督の役割を果たすために、より効率的な情報共有の形へと進化させても良いと感じています。
藤岡:たしかに、もともと真面目な社風であるところにアグレッシブさが加わって、どんどん情報を出してくるようになっていますね。一方で、今年度から執行側への権限移譲項目や、取締役会で議論するテーマを見直し、従来よりも事業の戦略や戦術、方向性を議論する場に変えています。我々は経営と監督の機能を担う形へと大きく変化したことで、今後どうなっていくか楽しみに思っています。
宮間:今後の取締役会に期待が膨らみます。
パーパス・ビジョン・バリューの策定について
2024年5月に策定したパーパス・ビジョン・バリューについて、どのような感想をおもちでしょうか?
藤岡:以前仕事でお付き合いのあった消費財の会社では、全社共通の指針として掲げている企業理念が浸透していて、海外のローカルスタッフにまで共有されているのを目の当たりにした経験があるので、着任してからずっと、パーパスと経営計画をつくりましょうと言い続けてきた経緯があります。本来順番は逆ですが、2022年に中期経営計画ができ、今年ようやく当社のパーパス・ビジョン・バリューが言語化されました。
安部:企業にとって現状維持は退化と同義ですから、常に変わり続けないといけません。今は変化のスピードが格段に速い時代ですから、変えてはいけないものを定めると逆に、後はもう全て変えていくのだという覚悟ができると思うのです。その意味で、パーパスという普遍的な価値観を定めたことで変えていくことに対する躊躇がなくなる、これは大きいと思います。
藤岡:やはり言葉が必要だったということです。めざすべき目標はこれまでもしっかりあったのに、言葉にしてこなかっただけなのです。今回明文化されたことで、「そういうことだよね」とみんなが腹落ちするようになり、中期経営計画の実行面でも大きくドライブがかかるだろうと期待しています。
宮間:東海理化に来て感動したのは、「世の中に必要なことであれば、人が手掛けないことこそやる」という創業の精神、それから“考えて動く”の「考動宣言」です。もともと存在はしていたものが今回新たにパーパス・ビジョン・バリューという形で策定されたことで、社員の皆さんにわかりやすく、社外に対してもしっかり伝えていける形になったので素晴らしいことだと思っています。
安部:私がパーパスに対する本気度を感じたのは、ステークホルダーに向けてパーパスを示すときにストーリー形式で伝えたいという話を聞いたことです。パーパスの策定にあたって本気で議論し尽くしたからこそ、そこに込めた思いや至った経緯を含め、ストーリーで伝えようとなっていったのだと理解できるので、本物のパーパスを定めた証だなと感じました。
中期経営計画の評価
中期経営計画への取り組み、進捗などについてお考えをお聞かせください。
藤岡:高い目標を立てればギャップは出てくるものですし、外部環境も常に変化していますから、定期的に戦略を見直す必要がありますが、現状それが十分になされていない点が課題です。ビジョンがあり中期経営計画があり年度の方針があってという3段階を常に行きつ戻りつするというロールアップが、残念ながらできていない。中期経営計画を2022年につくったときから言い続けていて、昨年も同じことを言いましたからおそらく執行側は何かしらやっているはずですが、会社として体系的にしっかりと取り組んでほしいと強く思います。
宮間:東海理化に来て最初に感じたのは、大きな得意先さまに部品を提供するという業態で長年やってきましたから、得意先さまが目標数字をつくっているという枠組みの中で事業が成り立ってきた会社だということです。藤岡さんのおっしゃったロールアップが足りないというご指摘の背景には、組織風土的に計画を立てて満足してしまった部分があるのかなと想像します。私もDNP(大日本印刷)で受注型での歴史的背景がありましたのでわかる部分もあります。

手段を一緒になって
考えていく
藤岡:大きく事業を変革しようとしているときは、どの会社でも生みの苦しみがある。当社も今が一番苦しい時期です。だからこそ、当初の想定と違ってきたのはどこなのか、戦略を見直すべきところ、計画通り進めるところはどこなのかの評価をもう少し丁寧にすべきだと思いますね。
宮間:業態を変えるべくチャレンジをしているところに、今回安部さんが社外取締役として加わってくださいました。安部さんは長年ソニーという自社ブランドで戦ってこられた、その知見を含めた相乗効果によって、東海理化の中が変わっていくのではないかという楽しみがありますよね。

機運が高まってきている。
その変化をどれだけ
後押しできるか
安部:4象限に分けてそれぞれの方向性を具体化している中期経営計画はとてもよくできていると思います。これが着実に実行されるために、進捗をモニタリングし、必要な提案をしていくことが社外取締役の役割だと考えています。そのうえで大事になってくるのが、進捗の正しい理解です。
進捗を把握するには定量的なアプローチができるものと、定性的で我々がなかなか理解しづらいものの2種類がありますが、定量的な情報は、事業の規模やポートフォリオのような思い切った議論をするためにより効果的に使うことが大事ではないかと思います。また、定性的な情報の中でも測定が難しいのが人のマインドのシフトです。二之夕社長の強いリーダーシップのもと皆さんが本当に腹落ちして前向きに働けているのか、ビジョンの共有や意識変革がどの程度進んでいるのかといった意識調査のようなものを実施し、定点で見ていくような努力をしていただくと、中期経営計画の進捗を見ながら活発な意見交換ができるのではないかと思います。
人的資本経営の推進について
人的資本経営を推進するために、どのような取り組みが必要だとお考えですか?
宮間:東海理化の社員の皆さんは本当に真面目で誠実、一所懸命です。若い世代の方は特に、エネルギッシュに新しいことをやっていこうという機運が高まってきているという話をよく聞きますし、そのためには環境を変えていかないと、という空気感を私自身も肌で感じることがあります。着実に変化は出てきていますから、後は50代辺りの皆さんがその変化をどれだけ後押しできるか。私がまだ見えていないだけかもしれませんが、その後押しによって変化の加速度が大きく違ってくるのではないかと思います。

リーダーの情熱、
社員の前向きさ。
すでに材料は揃っている
安部:二之夕社長からお誘いをいただいたとき、「ソニーの社員は自主性があり挑戦する気概がある人ばかりでうらやましい」と言われたのですが、グローバルで約11万人の社員全員がチャレンジ精神にあふれているはずはありませんし、人は誰でも変化を恐れます。ただ好奇心さえあれば「やってみたい」と思うはずです。火を付けるのは経営者やリーダーの役割に尽きると思っています。
素晴らしい企業文化、明確な方向性、リーダーの情熱、社員の前向きさ、東海理化にはすでに材料は揃っていますから、社員の自主性を促すために一つの仮説としてお話ししたことがあります。それは、つい東海理化として「人を採用する」「育てる」「活用する」と経営目線で捉えてしまいがちですが、社員が東海理化を「選ぶ」、東海理化で「伸びる」「活躍する」と、社員を主語にしてみたらどうなるでしょう、と言うことでした。社員を主語にしたときに、皆さんがどのような気持ちで何を求めているかということがより明らかになるかもしれません。
藤岡:いいですね。業態を変革しようと大きく人も動かした結果、ある地点までは到達できています。ただ、今はそこから次の地点に進む踊り場に留まっているような状態です。新領域に挑戦すべく、経営側は新たな技術開発に向けたさまざまな策を打ってはいても、社員の方から次々と企画が上がってくるような状態にはまだなれてはいません。安部さんがおっしゃる通り、社員を主語にして、次のステージにいくための手段を我々も一緒になって考えていかなくてはいけない時期だと思います。
これからの東海理化に期待すること
今後に向けての期待や、長期的に取り組んでいくべき課題についてお聞かせください。
宮間:何年後かに「東海理化って何をつくっている会社だっけ?」と思われる会社になっていると面白いし、簡単なことではありませんがそうなっていることを期待しています。改めて私の役割の一つと認識しているのは、女性役員の誕生です。安部さんがおっしゃったように主語を社員にしてみるなら、“女性役員に誕生していただく”でしょうか。
DNPも同じなのですが、幹部社員が出てくるなど女性の活躍は着実に進んできている一方でその次に続く人がなかなか見えにくい現状があります。そこをどう育てていくか。二之夕社長は大変強い想いで取り組んでおられますから、執行役員の皆さんが腹落ちして今まで以上に後押しする必要があると思っています。
安部:まだ東海理化を深く理解できていない立場ですが強いて言わせていただくと、新しい価値を創造していこうという動きは国内主体でリードしていて、海外の社員はモノづくりに特化している印象を受けます。会社の成長は一人ひとりの社員の成長の総和ですから、国内、海外という枠を取り払って優れた人財に活躍していただき、社員2万人の総和を東海理化の成長につなげていくことを期待します。その意味でまだまだ成長のオポチュニティがあるのではと感じています。
藤岡:新領域へチャレンジするということは、これまでの“クルマの一部に使われている会社”から、今度は東海理化というブランドで世に出ていくということで、それはかっこいいだろうなと改めて思います。裏方に徹していた会社の歴史の中で培われた企業文化も、新しく自社のブランドで出るとなったら自ずと空気感が違ってくるでしょう。
次のステップに進んだ社員は「これをやって」という指示を待つのではなく、「次はこれをやろうよ」「やってみようよ」という風土に変わっていく。東海理化というブランドが世に出るということは、そういう変化を意味するのでしょうね。